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カサカサ、と枯れ葉が舞う音に、わたしは思わず振り返った。
心臓のドキドキが、さらに速まる。
…びっくりした…。
小さく息をついてからもう一度、そぉっと校舎の壁から顔を出し、中庭を覗き込んだ。
美しい笑顔を浮かべた、上目遣いの女子生徒。
栗色に染めた髪が、背景の紅葉し始めた木々によく似合う。
彼女がそっと小さな紙袋を差し出し、それを受け取る手だけが視界に入る。
少し身を乗り出すと、彼女と向かい合う相手の横顔が確認出来た。
……普通に受け取ってるし……。
春山先生の優しい微笑みと、ありがとう、という口の動きが目に入った。
女子生徒が先生に小さく手を振ってからこちらに向かって歩いて来たので、慌てて壁の細い窪みに身を隠す。
校舎と一体化したわたしに気付くことなく、彼女は嬉しそうな顔をして通り過ぎて行った。
――確かあれは、1学年下の、2年の子だ。
全校集会の時、うちのクラスの男子が興奮して可愛い可愛いと騒いでいた。
名前、何だっけ…。
窪みの中にはまり込んだまま、必死で名前を思い出そうとしていたその時、――突然、陽がかげった。
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