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「預かっておこうと思ったんだけど」
「よかったぁ。ありがとうございます」
華奢な手を差し出し、彼女が万年筆を受け取る。
二人の指先が触れあう瞬間が、スローモーションのように残像を残した。
…この子、もしかして…。
わたしの心が、次第に重みを増していく。
「ちょうどよかった。…椎名、紹介するよ」
春山先生がにっこりと微笑んだ。
「11月から金曜の恋パラを担当する、加賀月子さん。…仲良くしてあげて」
「…よろしくお願いします」
加賀月子は、ぺこりとお辞儀をした。
顔を上げた彼女の笑顔には、…静かな敵対心が燃えていた。
…やっぱり…。
わたしはお辞儀を返しながら、心の中で深いため息をついた。
だから、来たくなかったんだ。
…わたしの嫌な予感は、…どうしていつもこんなに、的中するんだろう。
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