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彼女の方もそう感じているのか、わたし達は特に会話も無いまま、てくてくと階段を降りた。
昇降口で靴を履き替え、駐車場に向かう。
近付いて行くと、17番、と書かれたいつもの駐車スペースに、春山先生のセダンが停まっているのが見えた。
その前で立ち止まり、ふと顔を向けると、月子ちゃんがじっとこちらを見つめている。
「…萌先輩、って呼んでいいですか。」
にっこり笑顔で言われ、わたしも急いで笑顔を浮かべた。
「あ、うん、いいよ」
「私の事も、月子、って呼んでくださいね」
「うん、分かった」
…あれ。もしかしたら、意外といい子だったり…。
「萌先輩って、哲哉くんの車、乗った事あるんですか」
「……」
…え?
「ほら、哲哉くんの車の前で迷わず立ち止まったから、知ってるのかなって」
わたしはポカンと口を開けた。
…哲哉くん、って…。
「聞いてます?」
わたしの顔を覗きこむ笑顔は、ドキッとするほど魅力的だった。
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