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翌週の木曜日。
わたしはいつもより早目に放送室に向かった。
放送部室の前に置かれた、大きな投函BOXの蓋を開けてみる。
…よし、一番乗り。
箱の中には、まだたくさんの投稿用紙が入っていた。
用紙を抱えながらドアに向かい、一応、コンコン、とノックをしてみる。
「はい」
あれ。…誰かいる。
ドアをよいしょ、と開けると、更科ミツルがテーブルで雑誌を広げていた。
「おつかれさま、先輩」
「…おつかれさま」
足を踏み入れるかどうか迷っていると、更科くんはくすっと笑って、
「怖いの?俺のこと」
「……」
わたしはむっとして、黙って部室に入り、ドアを閉めた。
わざと乱暴に荷物を置いて、更科くんから一番遠い席に着く。
突然、更科くんが吹き出した。
「あはは。…わっかりやすいな、萌ちゃん」
「…ちょ、ちょっと…」
わたしは精一杯平静を装って、
「一応先輩なんだから、勝手にちゃん付けしないで」
「…わかったよ」
更科くんはにっこり笑って、
「萌」
「……」
わたしは更科くんからぷいと目を逸らし、投稿用紙に目を落とした。
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