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「萌、俺のこときらいでしょ」
「…大キライ」
「俺はね」
更科くんは、テーブル越しに身を乗り出した。
「萌のこと、好きだよ」
目線を上げると、そこにはいつもの生意気な笑みが浮かんでいた。
「ほら。今、俺のこと、恋愛対象として見始めたでしょ」
「…なに、それ」
「いいこと教えてあげるよ。
…人間てね。他人に好きって言われると、相手の中の好意を自分の中に一旦取り込むものなんだって。
そうすると、まるで鏡に映したみたいに、相手に対しての好意が生まれて来る」
更科くんは得意げに人差指を立てた。
「つまり、実際は萌が俺のこと好きじゃなくても、告白されると何となく気になる存在になっちゃうってこと。
…この状態で、俺がもし他の女と仲良くしてたら、萌の感情はどうなると思う?」
「……?」
「嫉妬するんだよ、萌が。…俺を取られたみたいな気持ちになって、ヤキモチを妬くんだ」
「…そんなわけ、ないじゃない」
「あるんだよ、それが。
今まで眼中になかった相手なのに、自分の事を好きだと分かると、人間はその相手を無意識に独占しようとするんだよ」
「…そんなの、恋愛感情じゃない」
「そうだよ。…俺が言いたいのはつまり、そういうこと」
「…え…?」
「恋愛なんて、ただの脳の勘違いなんだ。本気でのめり込む価値なんかない」
わたしは用紙をバサ、とテーブルに置いて、更科くんを見返した。
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