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「ねえ、萌」  ひんやりと冷たい手が、わたしの頬に触れた。 「俺と、付き合わない?……あんな奴もうやめちゃって、俺と――」 「好きだもん…」  瞬きをした瞬間、溜まっていた涙が両目からぽと、ぽと、と落ちる。 「わたし、…本当に、春山先生のこと、…好きだもん…」 「…かわいそ、萌」  細い指が、わたしの涙をすくい取る。 「そんな風に、自分に言い聞かせることしか出来ないなんて…」 「……。…好きだもん…」  わたしは、…先生のことを何も知らない。  だとしたら、この気持ちは何なんだろう。  苦しくて、愛おしくて…抱きしめられたいと願う、この気持ちは…。  一度零れた涙は止まらなくなり、次から次へと浮かび上がっては落ちて行く。  更科くんの手が、わたしの頭の後ろに添えられ、ゆっくりと顔が近付いた。 「泣き顔、すげえ可愛い。…もっと、泣かせたい…」  身体を引く間もなく、更科くんの唇がわたしの頬に触れた。  涙を舌先でぺロり、と舐めてから、わたしの顔を覗きこむ。 「俺、絶対にあんたのこと、手に入れるから」  その時突然、ガチャ、と扉が開いた。
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