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「おつかれーーーーっ……ス…」
田辺くんの大きな声が、途切れる。
わたしは我に返り、慌てて涙を拭った。
「あーーーーーっ!!」
絶叫が、部室の空気をびりっと震わせた。
「ミーツールー、お前っ!!…なに、椎名泣かせてんだよぉっ!!」
更科くんはため息をついて、
「田辺部長って、ほんと…タイミング悪いっすね、いつも。そんで声、でかい」
「…え、俺っ!?…俺が悪いパターン?これ!」
「わざとやってません?もしかして、そういうキャラ演じてるんですか」
ぼーっとしながら二人のやり取りを聞いていると、誰かが部屋に入って来る気配がした。
「…どうしたの、田辺。大声出して」
春山先生の声に、わたしは涙を見られまいと、急いで顔を背けた。
ぺらぺらと手元の投稿用紙をめくり始める。
「先生、ミツルが、椎名のこと泣かせてましたっ!!」
「先輩、小学生じゃないんだから」
「だって、ホントの事だろ!」
「ほらほら」
先生が二人をなだめる声。
「喧嘩しないの。…ミツル、先輩泣かせちゃダメだろ」
わたしは顔を伏せたまま、機械的に投稿用紙をめくり続けていた。
こんな顔を先生に見せたくなかった。
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