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「おつかれーっす!!」  突然響き渡った声に頬杖の肘ががくりと外れ、わたしは飛び起きた。  寝ぼけまなこに映ったのは、見慣れた田辺くんの少し驚いたような顔。  一瞬、自分がどこにいるのか、混乱した。 「あーあ。……起きちゃった」  頭の上から聞こえた声に天井を見上げると、目の前に更科ミツルの顔があり、その距離の近さに心臓がぴょこんと跳ねる。 「ちょっと田辺部長、声でかすぎですよ。タイミングも悪すぎ」  更科くんはわたしの座る椅子の後ろに立ち、静かな微笑みをたたえ、こちらを見下ろしていた。 「お前―――っ!見たぞ!…今、椎名にチュウしようとしてただろ!!」  ぷるぷると指さす田辺くんの言葉に驚き、もう一度見上げたわたしに、更科くんは手を振って見せた。 「違いますよ。…これです、これ」  その手には、キャップを外したピンク色の蛍光ペン。 「せっかく、顔に落書きしようと思ったのに」 「ちょっと…やだっ。何描こうとしたの」 「それは言えないですね。」  更科くんは澄ました顔で言った。 「やめてよ、もう…。ね、顔、何か書いてない?田辺くん、ちょっと見て」
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