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 水曜の放課後。  放送部の副部長を務めるわたしは、いつものように放送部室で下校放送用の原稿を確認していた。  昨夜遅くまで勉強をしていたせいもあって、原稿の文字を追ううちに耐えがたい睡魔に襲われた所までは覚えているが、……どうやらそのまま眠り込んでしまったらしい。  そして、気付かないうちに放送室にやって来ていた二年の放送部員、更科ミツルにいたずら書きの標的にされそうな所を、田辺くんの登場によって助けられたというわけだ。  更科くんは懲りた様子もなく、イタズラっぽい笑顔をこちらに向けている。  わたしが軽く睨むと、彼はさらにニヤリと口を捻じ曲げた。 「ったく、油断も隙もあったもんじゃない」  田辺くんはブツブツ言いながら部室のロッカーに自分の荷物を押しこむと、雑誌とコンビニ袋を手に、中央のテーブルに腰かけた。 「そうそう。椎名に伝言。春山先生から」 「え、何?」 「明日の放課後、恋パラ金曜日を引き継ぐ2年生を連れて来るから、早目に部室に来いって」  わたしの胸が、チクリと痛んだ。 「ん、分かった。…ありがと、田辺くん」  笑顔で答えつつも、心が重く沈みそうになる。  …引き継ぎ、か…。  わたしはシャーペンをいじいじといじりながら、小さくため息をついた。
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