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リングに立つ雄二の目は、恐ろしいほどに静寂な 光を宿している。
覇気が横溢する、野蛮でアナログな風貌。
強靭な意志を感じさせる、口元。
やがて、その口元が静かに動いた。
「根拠はねえけど、勝てねえ気がしねえ!」
雄二はトレーナーに向かって、いつものキメゼリ フを叫ぶように囁いた。
言葉と同時に、雄二の目が、突き刺すような光を 放つ。
一段と高まる歓声が渦を巻く。
客席にうずくまるように座っていた紗季は、徐々 に鼓動が高鳴ってくるのを感じた。
何度雄二の試合を観戦に来ても、この瞬間ばかり は、いつも生きた心地がしない。
組み合わせた両手を胸前に静かにそろえ、ゆっく りと息を吐いた。
閉じていた目を開けると、大輪の花のようなあで やかな顔が、照明に照らし出された。
そして……ゴングが鳴ると同時に、雄二は翔ぶが如 く青コーナーを飛び出した。
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