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終章
深夜、迎えにきた副島さんと二人でペガサスの背に乗り、遊園地へと飛んだ。
『解放次第、仲間達に遊園地の門が開くまで身を潜めさせ、門が開いたと同時に一斉に外へ逃げさせる。なに人間の足じゃ追いつけまい。相田、お前は彼女に乗って飛んでくれ』
ペガサスが計画を告げた。薄い眠気と収まらぬ興奮の中、メリーゴーランドの前に降り立ったのは午前四時半。
『起きろ。助けにきたぞ』
ペガサスは白馬に叫んだ。白馬達は当然、見た目にはただの像だったが
『ゾフィウス、信じてたぜ』
『何言ってんだ、あいつは裏切ったんだって散々悪態をついてたのは誰だったっけ』
『ああ早く自由にしてくれ』
様々な声がペガサスと同様、俺の心から響いてきた。その中の、
『愛するゾフィウス。ああセピアは夢を見てるのかしら』
という声をどうして聞き漏らせたろう。
急いで副島さんと、彼らの背中に股がっていった。
彼らは股がると徐々に柔らかくなり、最後には繋がった柱を自ら引きちぎって解放された。そして彼らを門の傍まで誘導し管理人が門を開けたらすぐに飛び出すよう伝え、副島さんはゾフィウスに、俺は助けたペガサスに乗り新鮮な朝日に照らされていく遊園地を少しずつ見下ろしていった。管理人が門を開けるのが見えた。
直後の、空まで響く凄まじい足音を聞けば見なくても管理人の表情を安易に想像出来た。
ゾフィウスが言った。
「セピア、どうだ。自由の色も、風も、光も、匂いも心地良かろう」
やっぱり。思った通りだーー。
朝日が零した光が俺達に優しく降りかかる。今なら、この色は自由の色だと言えそうな気がする。
確かに俺も、これは自由になれた気がしているだけだと分かっている。またすぐに下の暮らしに迷い込まねばならないこと、自由の色を再び見失うであろうことも分かっている。
それでもいい、今の俺にはこの透けた檸檬色は自由の色なんだ。それでいいじゃないか。
二頭のペガサスは俺達を乗せ、朝の冷気を切り裂くように飛んでいく。毛並みに朝の光が染み込み、一層自由を思わせた。
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