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夕方。
といっても暑さはまだまだ残ってる。
アスファルトはまだ熱いし、吹き抜ける風も湿気をはらんで汗を誘う。
それでも日が落ちれば多少は過ごしやすくなるもので、
「あの、ひとりですか?」
歩く人にも余裕が出来るのか、ガードレールに縋る凌に知らない誰かが声をかけてきた。
「今のところ」
それでもニコリと笑って返すのはもはや彼にとっては条件反射。
女の子にはいつでも誰にでも優しく微笑むのが彼だ。
「えと、良かったらこの先でお祭りあるんです。だから一緒に――」
「あ、もしかして僕、ナンパされてる?」
「え? あの……」
少し恥ずかしがるように俯く彼女に凌はニコリと笑う。
「ごめんね。僕、彼女待ってるから」
そんなセリフに目の前の彼女は、
「でっ、ですよね! ごめんなさい!!」
と叫んで走り去っていった。
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