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走り去る彼女を見送ると、その向こうから浴衣姿の彼女が歩いてきたから凌はさっき以上に柔らかい笑みを浮かべる。
履き慣れていない下駄でぎこちない歩き方だって可愛らしい。
そして、
「ナンパ、されてたんですか?」
少し拗ねるような台詞だって可愛くて、
「うん。でも彼女待ってるからって断ったけどね」
「待ってなかったら断らないんですか?」
「それでも断るよ。美穂以外の誰かとキスしたいと思わないし」
さらりと言われる台詞に形勢は簡単にひっくり返される。
赤く火照りはじめた頬を隠すように下を向いたけど、
「髪、アップにしたんだ。可愛いね」
髪を結ってしまったせいで隠すことができない。しかも、
「美穂に妬いてもらえるなんて、たまにはナンパされるのも悪くないね」
なんて言うから、
「妬いてなんかっ」
「そういうところも全部、可愛くて好きだよ」
「――っ」
もう何も言えなくなってしまう。
そんな美穂の手を彼の手が浚って、
「行こうか」
そう言うから、美穂は素直に頷いた。
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