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カタカタと鳴る下駄はまだぎこちない。
だから歩くスピードはいつもよりゆっくり。
「やっぱりいいね、女の子の浴衣姿って」
「……女の子なら誰でもそう思っちゃうんですね」
「もしかしてまだ拗ねてる? さっきのナンパは本当に向こうからいきなり声掛けてきてね」
「拗ねてないし、ちゃんと分かってます」
分かってる、けど……。
「向こうでもナンパされちゃうんでしょうね」
「え?」
小さな呟きに聞き返す凌の声。だけど美穂は繰り返したりせず、
「なんでもないです」
と答えて、代わりに彼の手をぎゅっと握った。
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