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お宮に近づくにつれて人影も増えてくる。
そして、お宮に続く参道の両脇には夜店も並んで、ライトを照らしおいしそうな匂いを漂わせて賑やかさを増していく。
「何か食べたい?」
そんなセリフにフルフルと首を振ると凌は「そう」とだけ答えて、人の波に乗るように前に進んでいく。
夜店の灯りが少し減って、石の鳥居をくぐれば間の前には長い階段。
「足元に気をつけて」
そう言われた瞬間に、
「あっ」
躓いてしまった。だけど、隣には彼がいて手は繋がれてるから。
「ほら、大丈夫?」
その手を引かれて彼に体を支えられて転ぶことはない。だけど、完全に美穂の体は凌の身体に寄り添うようになって、胸に頭を預けてる格好で――。
「だっ、大丈夫です」
慌てて彼の胸に手を置いて突っぱねるように離れると、クスリと笑い声が落ちてくる。
「やっぱりいいね、浴衣って」
そんな台詞に繋いでる手も離そうとしたのに、
「ダメ。美穂は迷子になっちゃうからね」
彼はその手を離してはくれなかった。
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