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「……ちょ、あんまりマジマジと見ないでください」
「どうして?」
「恥ずかしいんです!」
どうして? と聞きたいのはこちらの方。なのに、
「浴衣着るのが恥ずかしいの? だったら脱いだままでも――」
「違います! ってか、裸で歩いてたら犯罪です!!」
彼の思考はどこまでも美穂には理解できない。
「そんな。他の誰かに美穂の裸を見せるはずなんてないでしょう? 浴衣が嫌なら僕の服を着せてあげる」
「……」
「あ、それはそれでおいしいかも」
「理解不能です」
ため息をつくようにそう言うと美穂は帯をギュッと締めてクルリと回した。
「あ、最後ってそうするんだ。着物って一人だとどうやって着るんだろう? って不思議に思ってたけど、なるほど」
「……それを、見てたんですか?」
「うん。あぁ、勿論美穂もちゃんと見てたから」
目の前でニコリと笑う彼には脱力しそうになる。
だけどそんな仕草を少しでも見せれば、
「大丈夫? これでも手加減したつもり――」
「だっ、大丈夫です! だからもう言わないで!!」
「ん? あぁ、気を失ったこと? あれはさすがの僕も驚いたっていうか」
「――だっ、だから言わないでったら!!」
顔を真っ赤に蒸気させて叫ぶ美穂に凌はクスクス笑う。
「でも、一つだけいい?」
「もういいですってば!」
「そう?」
「そうです!」
「……君がいいならいいけど」
そう言って立ち上がる。
「それじゃ、送るよ」
さっきまで顔を真っ赤にしていたのに、そんな一言で急に熱は冷めていった。
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