1677人が本棚に入れています
本棚に追加
繋いだ手が熱い。
取り巻く空気も夜だというのに息苦しいほど暑い。
「明日は予備校かな?」
「あ、はい」
答えて隣を見上げれば少し切なそうに歪んだ笑顔が見える。
「見送りはいらないから」
「え?」
一瞬では理解出来なくて、瞬きを繰り返す美穂。
頭の中で彼の言った事をもう一度繰り返して――。
「だっ、だって週末だって!」
「ごめん。向こうの時間で伝えてたね」
「……」
アメリカは日付変更線の向こう側。
だから、帰国日が一日ずれてしまう。
理解は出来たけど、心まではついて来ない。
「だ、大丈夫です! 一日くらい休んだって」
「受験生にとって夏休みの一日は重要だよ」
「……だけど」
そうかもしれない。
まして、親に高い授業料だって払ってもらってる。
でも、こうして二人でいる時間だって……。
「またすぐに帰ってくるから」
最初のコメントを投稿しよう!