第6話

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繋いだ手が熱い。 取り巻く空気も夜だというのに息苦しいほど暑い。 「明日は予備校かな?」 「あ、はい」 答えて隣を見上げれば少し切なそうに歪んだ笑顔が見える。 「見送りはいらないから」 「え?」 一瞬では理解出来なくて、瞬きを繰り返す美穂。 頭の中で彼の言った事をもう一度繰り返して――。 「だっ、だって週末だって!」 「ごめん。向こうの時間で伝えてたね」 「……」 アメリカは日付変更線の向こう側。 だから、帰国日が一日ずれてしまう。 理解は出来たけど、心まではついて来ない。 「だ、大丈夫です! 一日くらい休んだって」 「受験生にとって夏休みの一日は重要だよ」 「……だけど」 そうかもしれない。 まして、親に高い授業料だって払ってもらってる。 でも、こうして二人でいる時間だって……。 「またすぐに帰ってくるから」
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