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『すぐって、いつ?』なんて聞けるはずがない。
渡航費用だって安い訳じゃない。 今回は偶然とか、運がよかっただけ。
それがちゃんと分かってるから、美穂はもう何も言わず俯いて、繋がれた手をギュッと握った。
握り返してくれる力に視界がぼやけてくる。
マンションに着けばそれでお別れ。
そんな状況で泣かないなんてのは無理だから――。
「泣かないで、美穂」
「……っ、泣いてなんか」
「じゃ、これは汗かな?」
彼の両手が美穂の両頬を包んで上を向かせる。
「……夏ですから」
「そうだね」
キスは頬を流れる涙に。
「うん、しょっぱい」
「馬鹿……」
「また連絡するから」
「はい」
また、ネットを使ってしか会えない。
こうして交わすキスも、触れることすら出来なくなる距離になる。
「あのね……」
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