1677人が本棚に入れています
本棚に追加
聞こえる声にまぶたを開けると、優しく笑う凌の顔が見える。
ゆっくりと動き始める濡れた唇。
それをじっと見つめていたら、彼の声が聞こえてきた。
「セックスはあくまでオマケで、俺は美穂が欲しいだけたから」
「……はい!?」
想像していたセリフと全く違うものだから、流れてた涙まで引っ込みそうになる。
「だから明日見送らなくていいって言ってる訳じゃないから」
「……」
ここまで言われて、彼のいいたいことが理解できて、美穂はふっと表情を緩めた。
彼なりの気遣いは他の人とは違うけど、それを嬉しく感じてしまうのは彼に染まってきたんだろうか?
そんなことを考えていると、「あと……」と続くから美穂は首を傾げた。
「それ、ごめんね。君に傷つけちゃった」
「……?」
そんな覚えなんてまるでなくて、不思議そうに見つめる美穂に凌は悪びれることなくニコリと笑う。そして、
「ここ。いつか消えるけどまた付けに帰るよ」
トンっと胸元を指先でつつかれて――。
「あぁ――!!」
夏の夜、美穂の叫び声が響いた。
最初のコメントを投稿しよう!