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誰かが話してることを思い出してそう言えば、彼の笑みに苦味が混じる。
だからそれ以上言えなくなってしまう。そして知りたくも無かったのに、
「花火大会まではこっちに居れないから」
そう言われてしまって、美穂は「……そう、ですか」と小さく返した。
どうして、離れても大丈夫なんて思ったしまったんだろう?
いづれ帰るのが分かっていても、その事実を目の当たりにすると胸に大きな刃を突き立てられたらような痛みを感じてしまうのに。
「出来れば浴衣姿の君が見たいな」
「いいですよ? すっごく可愛くて帰りたくなくなるかもしれませんけど」
「そう思うよ。思わずその場で襲いたくなるかも」
「……冗談だったんですけど?」
「俺はいつでも本気だよ」
「襲わないでくださいね」
「保証は出来ないね」
「嫌がることはしないって言ったくせに」
「嫌がらなかったらいいんでしょ?」
「先輩っ!!」
こんなくだらない会話をいつまでもしていたい。
そうしたら、泣かなくてすむから。
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