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「お姉ちゃん、頼みがあるんですけど……」
会社から帰ってビールわ煽る姉に遠慮がちな美穂の声が聞こえた。
「なあに? お小遣いならママに言ってよ? 私だって給料日前なんだから」
「違うってば!」
そう言いながらソファの上にふわりと広げたのは淡い藤色に色鮮やかな蝶が舞うの浴衣。
「これ、着方教えて?」
少し恥ずかしそうに頬を赤らめる妹に姉はニンマリと笑った。
「そっかそっか、週末って確かお祭りがあるんだよね~。ふーん、あの彼氏と行くんだ?」
「そっ、そう言う訳じゃ!」
「違うの?」
「……そう、だけど」
「うんうん、青春だねぇ。下駄はいて躓いて『あっ』とか言いながら彼にしがみついたりするわけだ」
「しっ、しません!」
叫ぶ美穂にお構いなく、姉は「うんうん」とひとり納得しながらビールを美味しそうに飲み干す。
「あのオクテな彼だものね。それっくらいしないとキスだって難しいわよね~」
「……」
いまだに『鳴海凌』という男を勘違いしてる姉。
だからといって訂正するの面倒だから。
「いいから教えてってば!」
美穂は姉の手からビールの入ったコップを奪って姉を急かした。
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