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佑奈(ゆうな)の住むマンションは南青山の坂の上にあった。
国道246号線から少し入った、外苑前近郊の8階建てのマンション。
決して新しくはなかったが、駅も近く、タクシーも簡単に拾える。
スーパーやコンビニもあり、買い物にも困らない。
利便が抜群に良い。
「この前、鶯が鳴いてたの」
「本当?」
近辺には、広い霊園があり、国道から少し離れれば閑静な住宅地が並ぶ。
都心でありながら、静かで自然もそれなりに多い。
「昔は、この辺りから渋谷のほうまで本物の山だったみたいよ」
「今だと、考えられないな。人も多いし、ゴミゴミして、夜もずっと明るいのに....」
「でも治安は悪くないわ。お巡りさんがよく歩いてるし、芸能人とか政治家の家が多いから」
佑奈は、美容整形外科クリニックの受付事務として勤めながら、夜は六本木のクラブで働いていた。
「病院の仕事と平行して平気なの?」
「バレたらまずいかも」
「そんなに頑張らなくてもいいんじゃない?」
「だって、食べていけないから」
「そうかなぁ....」
「それだけじゃないけど....。自分でなにかやりたいのよ。お店かサロン。エステとか、ネイルとか....」
「身体、キツくないか?」
「正直キツいわよ。私、小さい時から偏頭痛持ちで....頭の血管が普通の人と違うみたいだから。頭痛が始まったら動けないもの....」
「ほどほどにしないと」
「じゃぁ助けてくれる?」
「少しなら考えるけど....まぁ、宝くじにでも当たったら全額工面するよ」
「うん。待ってる」
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