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優太(ゆうた)は、外資系製薬会社の医薬情報担当者として働いている。
優太が佑奈の働いているクリニックの担当者だったことで知り合い、そのまま親しくなった。
佑奈のほうが3つ年上......
──気ままな関係──
と、優太は勝手に考えていたが、佑奈はどういうつもりだったのか....。
代官山に大きい本屋があり、コーヒーショップが入っていて読書スペースが充実している。
同じ敷地内には洒落たレストランなどもあり、その一帯が佑奈のお気に入りだった。
人は多いが、本屋というだけあり環境はいつも静か。
「こんな大きな本屋が読みたい放題にして、これで商売になるのかなぁ?」
「専門書が多いのよ。品揃えもいいし、値段も....ね。それが売れるから」
確かに、様々な分野の専門書が数多く並んでいる。
「優太くんはこの辺りの生まれなの?」
「まぁ....そうなるかなぁ。渋谷の方。昔はもっとなんにもないとこだったけど…」
「この辺りにも『喪苦楽階段』があるのね」
「モグラ階段?なにそれ....?」
「“お話し”に出てくる階段よ。知らない?」
「知らない」
「この間、ここで本を読みながら一人でコーヒーを飲んでいたの」
「うん」
「後ろのカウンターに座ってた男のお客さんが2人、話をしていたの。多分、この近くに住んでいる人だと思う」
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