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写真に写る楽しげな二人。
おどけてみせる十代の少年と、左の薬指に嵌めたハートの形をしたペリドットの指環を見せつける同年代の少女。
二人の下に丸みのある文字で書かれた言葉。
「いつまでも一緒だよ」
腐臭の漂う廃墟と化した街。今、この街で生きている者は六人だけ。
特殊な防刃服に身を包んだ四人の男たちとその先頭にたつ、まだ十代後半くらいの少女。
あとの一人は彼らを運ぶ輸送ヘリのパイロットだ。
佐藤夏生、藤崎遥、仁村雄大、松田嘉那太、トマス・ウィルソン、そして鈴村陽菜。
「標的確認。数は十五」
スコープで前方を凝視していた藤崎が無感情な声で報告する。
「ってことは一人三体殺ればいいわけだな」
佐藤の言葉に仁村が茶化すように言う。
「ナツオ、そりゃ計算違いだぜ。一人二体だ。俺たちがモタモタやってる間に隊長が七体殺っちまう」
「…」
松田が無言で笑った。
彼らの様子をつまらなそうに眺めながら少女が淡々と腰にはいた刀を鞘から抜き放つ。
「全員、戦闘準備」
西暦二〇四七年。青森県を襲った大地震によって六ヶ所村にある高濃度放射性廃棄物保管センターが機能不全を起こしたことに始まった原子力発電所の連鎖メルトダウンによって日本は滅亡した。
沖縄と九州の一部を除いた国土は高レベルの放射性物質に汚染され、人はもとより殆どの生物が生存不可能な死の大地となった。
深刻な原子力事故に、世界各国は一斉に日本を非難したが、謝罪や賠償をするべき日本という国は既に地上から消え去っており、その怒りは国外にいたなどで生き残った僅かな日本人たちに向けられた。
事故後、放射性物質を撒き散らす地獄の釜に対処したのはアメリカとロシア、フランスの三カ国。
しかし、あまりに桁違いの放射線量に現地調査はままならず、無人偵察機による空撮すらも事故発生から二年の月日を要した。
事故発生から四年が過ぎた頃、比較的被害の少ない九州地方に日本暫定政府が発足した。
国の復興は帰る場所を失ない、各地で激しい憎しみや怒りを受けながら息をひそめて生きてきた日本人に希望を与えた。
しかし、この暫定政府は、日本人のためのものではなく、ある意図のために造り出された、生き残った日本人を更なる悪夢へと送り込むためのものだった。
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