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 台本によれば、これはわたしと彩加が七不思議を検証するため、夜の校内を探索するというドキュメンタリーらしい。  そして後で編集する際、心霊らしきものをうまく合成して、『あとで観てみたら後ろの方に何か映っちゃってた』的な映像を作り、観客をぞっとさせる、というのがヒロシ監督の構想のようだった。  映像系の専門学校に通う事を決めているヒロシくんは、本気で映画監督を目指しているそうで、今までにも自主映画を何本か撮っているらしい。  スタッフにてきぱきと指示を出す姿は、いつも教室で見る委員長としての彼より、ずっと頼もしく見えた。  トイレの中でカメラが回っている間、わたしはさりげなく振り返った。  スーツ姿の春山先生が、腕組みをして廊下の壁に寄りかかっている。  担任が最後まで付き添う、というのが夜間の撮影許可の条件だったらしい。  目が合うと、わたしは慌てて首を前に向けた。  ……気まずい……。  わたしは昨日の放課後の事を思い出していた。  
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