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「おっ、いーねー奈良崎!……じゃ、椎名、あとは任せた」
「うん」
カメラが回ると、ヒロシがカウントを始める。
「5、4、3、2、1、…はいっ」
わたしはトトト、と前に進み出た。
「じゃ、撮るよー、彩加。はい、ポーズ」
私がシャッターを押した瞬間、彩加の目が大きく見開かれた。
「…どしたの?」
わたしが聞くと、彩加は震える指で、後方の出口を指差した。
皆、一斉に振り向くと…。
音楽室の出口から、バッハの首が半分覗いていた。
「きゃーーーーっ!!!」
トモコの悲鳴が響き渡る。
わたしも彩加に飛び付き、夢中で抱き合った。
恐る恐る、もう一度顔を上げると…。
「おやおや、すいませんね、驚かせて」
それは、バッハ頭の警備員さんだった。
ニコニコと愛想よく微笑んでいる。
「どうも、お騒がせして申し訳ありません」
春山先生がにこやかに頭を下げる。
「いえいえ、ちゃんと学校から聞いてますから、大丈夫ですよ。危ないところにだけは、行かないようにね」
警備員さんはニコニコしながら帽子を被り、ひょいと姿を消した。
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