無名の英雄

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いや、確かに蛮族攻めてきた時に助けたっていうのはあるけどさ、てかあん時はまだ三人とも一般人だったし。 それがその後、親に無理言って冒険者になったらしい。親も普通無理言って止めさせると思うんだけどな……何を言ったんだろうあいつら。 「あいつらにとって、お前は憧れの存在なんだろうな……と、それはそれで、何か困ってる事は無いか?」 「ん? 困ってる事って言われても……あっ、だったらさ、遅くなってもいいから何か適当な剣買ってきてくんない? てか、何で急にそんな事を?」 あいつらにとって憧れの存在、か……まあ、暇な時は一緒に鍛錬したりしてアドバイスしてるけどさ。 んで、いきなり困った事は無いかって言われたので、適当な剣を頼んだ。 「ああ、それくらいなら明日には出来るな……それと、いつも世話になってるからな、お礼の一つくらいさせてくれ」 「そ、そう言われたら断るわけにはいかないな……そんじゃ、頼むぜ」 そしてそのお願いの仕方は卑怯だ。と言うのも昔の俺達もこうやってお願いしていたからだ。 例えば、何処かの村にお世話になった後、そこに蛮族が攻めてくる事が分かって、世話になったからお礼をしたいって感じだった。 つまりは恩返しってやつには弱いんだよな俺……。 「お前と何年友達やってると思う? 弱点くらい知らなきゃ親友とはならないな」 「ま、まあ確かにそうなんだけどさ……というか、そろそろ寝なくていいのか? 明日も仕事あんだろ?」 「そうだな……それじゃ、先に寝させてもらう……お休みな」 「おう、お休み」 ラグは表では絶対に見せないような笑顔でそう言ってくる。そしてさり気なく親友と言ってくれるのがめっちゃ嬉しい。 ラグは本当の意味で信頼できるやつにしか笑顔を見せないからな……みせても苦笑くらいだ。 そして、時計を見ると、十一時を過ぎていたので、ラグにそう言うと、ラグはそう言いながら立ち上がり、部屋に繋がっている階段を上っていく。 「……さて、真面目に片づけるか」 俺はラグが部屋に入ったのを音で確認し、片づけを再開する。 この時はいつも通りこういう生活が続くのかなと思っていた。 でも、まさかあんな風になってしまうなんて、この時の俺は思いもしなかった。
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