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『ところで、お前さ』
「はいっ」
上機嫌で応えると、
『今日、どこまで話、立ち聞きしてた?』
「……」
夢見心地だった気分が、一気に現実に引き戻される。
「そんな…別に、立ち聞きしてたわけじゃ…」
わたしは不満そうにブツブツ言ってから、
「犯人が防犯カメラに映ってない、とか、幽霊かもしれない、とか…」
『それ。…誰かに話した?』
「えっと…。…峰村先生にだけ…」
『ああ、…今日子先生は大丈夫。…あとは、言ってない?』
「はい」
『じゃあ、誰にも、内緒にして。…すごく大事なことだから』
「…はい。分かりました」
先生の口調が真剣だったので、わたしの背筋も自然と伸びた。
「…先生」
「ん?」
「…今日、一緒にいたおじさん、誰ですか?」
『…ああ。…あの人はね、刑事さん』
「刑事さん…?あ、火事のこと、調べに?」
『いや、うん…まあ、そんな感じ』
「…お知り合いなんですか?」
『どうして?』
「だって、…おとうさん、て、呼んでたから…」
突然、先生が沈黙したので、わたしは電波が途切れたのかと思った。
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