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「‥先生?」 ワンテンポ遅れて、 『…うん。…聞き違いじゃない?』 「でも…」 『…椎名さ』 「え?」 『…今週の土曜日、空いてる?』  わたしは、思わずぴょこんと立ち上がった。 「空いてる!!」  胸が一気に高鳴り、無意識に携帯をきつく握りしめる。 『じゃあ、俺が予約、入れたからな。…近くなったら、また連絡する』 「はいっ」  先生はくすっと笑って、 『ただし、ちゃんと勉強すること。…世界史の小テスト、点数悪かったら、キャンセルだよ』 「…え…あ…はい…」  ちょっぴりテンションが下がる。 『じゃ、がんばって。…また明日。…おやすみ』 「はい。…おやすみなさい」  電話を切り、しばらく余韻に浸ってから、わたしは勉強机に飛びついた。  ウキウキしながら、世界史の教科書を取り出す。  …先生と、…初めて学校以外での約束、しちゃった…。  ついつい、笑顔がこぼれる。  …ん?…何か、話の途中だったような…。  ちらりと浮かんだそんな考えはたちまち消え去り、わたしは世界史の教科書をぱらぱらとめくりながら、何を着て行こうか、頭の中で服のコーディネートを始めていた。
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