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 月曜の朝の教室は、ボヤ騒ぎの話題で持ちきりだった。  新聞によれば、やはり放火の可能性が高いらしく、ロウソクの燃え残りが見つかったことから、簡単な時限装置的な仕掛けがしてあった可能性についても触れてあった。  犯人の予想や過去の放火事件についての情報など、面白がって盛り上がっている生徒もいたが、午後になる頃には、みんな飽きたのか、その話題はすっかり下火になっていた。  昼休み、購買で飲み物を買って教室に戻ろうとしていたわたしは、一階の渡り廊下から、遠くに春山先生の姿を見つけた。  先生は、燃え残った小屋の前に佇んでいた。  小屋の周りにはロープが張り巡らされ、校庭の片隅のその場所だけが、異様な雰囲気だった。  …なにしてるんだろう。  わたしは急いで昇降口に回り、革靴に履き替え、外に出た。  そっと近付き、校舎の陰から覗くと、…先生は何やら、上の方を見上げ、キョロキョロしている。  そうかと思えば、一度小屋から離れて、壁に沿って近づいて、立ち止まって、という動きを、何度か繰り返す。  何となく声をかけづらくて、わたしはその様子をしばらく眺めていた。  …なんかわたし、最近、隠れてばっかりだな…。  後ろめたさを感じ、引き返そうかどうしようか迷っているうちに、春山先生のものとは別の革靴の足音が近付いて来ることに気付いた。  壁際に引っ込んで、身体を縮める。
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