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恐る恐る顔を出すと、――春山先生は腕組みをしてこちらを見ている。
…また、見つかった…。
すごすごと壁の陰から出て行くと、春山先生と並んで立つ、中年男性の姿が視界に飛び込んで来た。
がっちりとした体つきと、鋭い眼。
白髪交じりの頭と、少しくすんだ顔色が、やや疲れを感じさせる。
わたしがぺこりとお辞儀をすると、その目は少し和らぎ、男性が微笑みを湛えて頷き返した。
「教室に戻ってなさい」
春山先生は、子供をたしなめるような、優しい口調で言った。
「…はい」
校舎へ向かう途中、小屋の方を振り返ると、あの中年男性が、現場に張られたロープの中に足を踏み入れるところだった。
春山先生が、ロープを持ち上げて手伝っている。
…おとうさん、て言ったよね。
…いや…。
…後藤さん、って言ったのかな?
だんだん自信の無くなって来たわたしは、首を傾げながら、昇降口に向かった。
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