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*** 「あれっ。…峰村先生?」  わたしの声に、峰村今日子先生――通称フジコ先生は、階段の途中で振り返ると、にっこりと微笑んだ。 「椎名さん、久しぶり」 「どうしたんですか。…今日は木曜日じゃないのに」  わたしは階段を登り、先生と向かい合った。  スクールカウンセラーであるフジコ先生は、毎週一度、木曜日にだけ、この学校でカウンセリングルームを開いている。  月曜日に見かけるのは、珍しい事だった。 「放火の件で、呼び出されたの。ストレスを感じる生徒がいるかもしれないから、って」  先生はゆるくウエーブのかかった髪を耳にかけて、私の顔を覗きこんだ。 「椎名さん、目撃したんですってね。…大丈夫?ショック受けてない?」 「わたしは全然。…でも、怖いこと聞いちゃって…」  わたしは声をひそめた。 「もしかしたら、犯人、…オバケかもしれないんですよ」 「…オバケ?」  先生はきょとんとして目を瞬いた。
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