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時計の針は、夜の8時を差していた。
枕を抱きしめながらベッドに丸くなってぼんやりしていると、握っていた携帯が振動した。
わたしはガバッと飛び起きた。
…先生からの、返信…っ。
胸を高鳴らせながらメールを開ける。
『サンマ』
「……」
わたしはボス、と枕に顔を埋めた。
…もうちょっと、文字数、欲しかった…。
せめて、魚の絵文字くらい、つけてくれてもいいのに…。
1時間ほど前にわたしの方から、
『こんばんは。お仕事、お疲れ様です。
今日はごめんなさい、立ち聞きとかは全然してません。ほんとですよ。
ところで、今日の夕ご飯、何食べるんですか?』
という絵文字満載のメールを打って、待ちに待った返信が、これ。
初めてもらった先生からのメールが、『サンマ』じゃ…。
なんだかすっごく、切ない。
わたしはため息をついて、ベッドから出た。
しょうがないから、勉強でもしよう。
メールを待つ間、一時間をまるっきり無駄にしてしまった事を後悔しながら、鞄からノートを取り出していると、ブーン、という振動音が聞こえた。
ベッドに戻り、携帯を開く。
『春山哲哉』
…あ…。
…初めての、先生からの電話…。
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