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感動のあまり震えそうになる指先で、通話ボタンを押す。
「…はい…」
『ちゃんと勉強、してんの?』
いきなり、春山先生の、素っ気ない声。
わたしは込み上げて来る喜びに、思わず顔を緩ませた。
「…今、しようと思ってたんです」
『どうせ、メール待ってる間、ウダウダして何もやってないんだろ』
「……」
なんで、分かっちゃうんだろう。
「先生、…もうサンマ、食べたんですか?」
『まだ』
「遅いんですね、夕ご飯」
『今日、忙しかったからね』
「…大変ですね」
『大変だよ。…一応、受験生たちを受け持ってるからね』
…そういう言葉を聞くと、…このひとはホントに先生なんだなあ、と思う。
「先生って、…やっぱり、先生なんですよね…」
先生の、小さな笑い声。
『めちゃめちゃ、先生だよ。…だからこうして、ちゃんと勉強してるかどうか、確認の電話、入れてるんだろ』
「…みんなに、するんですか」
『バカ。するわけないだろ。お前だけだよ』
わたしの胸が、きゅ、と疼いた。
…今の言葉だけで、ごはん食べなくてもしばらく生きられそう…。
さっきまでのウダウダはすっかり何処かに飛んで、わたしの心は今にもふわふわと浮き上がりそうだった。
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