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*****  部室のドアをノックすると、中からガタガタ、という音がした。  …何だろう…。  一瞬の間の後、「はい」という返事。 「失礼します…」  ドアを開けると、テーブルの向こうに春山先生が座っていた。 「先生…」  ほっとして足を踏み入れると、その二つ離れた席に座る加賀月子の姿が目に入る。  …え…。  彼女は少し俯き、指先で栗色のきれいな髪を整えていた。  春山先生は、いつもと変わらない無表情で、原稿に目を落としている。 「……」  …なに、この空気…。 「おつかれさまです、萌先輩」  立ち竦むわたしに、月子ちゃんがにっこりと微笑んで見せた。  その頬は、ほんのりピンク色に染まっている。 「…おつかれ、さま…」  …なにか、おかしい。  今、…絶対二人で…何か、してた。  間違いない。  …わたしと先生が秘密を共有しているのと全く同じ空気を、この二人から感じる。 「どうかしたんですか、先輩」  挑むような目で、月子ちゃんがわたしを見上げる。 「あ、…あの…先生」 「…ん?」  先生は表情を変えずに顔を上げた。 「…小林先生が、職員室に来てほしいそうです」 「…分かった。ありがとう」  先生は立ち上がって、わたしとすれ違うように部屋から出て行った。  ドアが閉まると、部室内には気まずい空気だけが取り残された。  座ることも出来ず、月子ちゃんの顔を見つめていると、 「なんですか?」  月子ちゃんが何かを含んだ様な微笑みを浮かべ、首を傾げた。
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