-2-

3/6
前へ
/34ページ
次へ
 校門を出ると、わたしは門に寄り掛かり、先生の車を待つことにした。  いつ出てくるかは分からないけれど、ここに居るのが一番確実だ。  徐々に冷えて来る身体をさすりながら、校門の中を気にしていると、突然、ポン、と肩を叩かれた。  振り向くと、目の前に立っていたのは、大きな体をした、あの白井という記者だった。 「久しぶりだね、萌ちゃん。…電話待ってたのに、連絡くれないから、がっかりしてたんだよ」  陽気に言ってからわたしの顔を見て、おや、という顔をする。 「…泣いてるの?…どうしたの。何かあった?」 「…なんでもありません」  わたしは顔を背けて、校門の中に目をやった。  しばらく間があってから、足音が遠のいて行く。  諦めてくれたことにほっとして、わたしはそのまま校門の中を見つめ続けた。  まだ10月の末だと言うのに、ぐんと気温が下がり始め、上着を着ていないわたしの体を冷やしていく。  凍えそうなほど冷たくなってきた両手を擦り合わせ、はあ、と息を吐きかけた時、目の前に缶コーヒーが差し出された。 「どうぞ」  顔を向けると、白井さんがニコニコ笑っていた。 「…いえ、結構です」 「ガードが固いなあ、萌ちゃんは。…いいよ、飲まなくても。手だけでも暖めなよ」  白井さんはわたしの手を取って、缶コーヒーを握らせた。  じんわりと指先に伝わる温もりが、心地いい。 「…ありがとうございます」  わたしが缶を両手で包むと、彼は思いのほか優しい微笑みを浮かべた。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1294人が本棚に入れています
本棚に追加