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やがてその手を解くと、先生はわたしの顔を覗き込んだ。
「お前さ。…俺が悪い先生だったら、どうすんの。
…そんな無防備だと、ほんとに部屋に連れ込まれるよ。…バカ」
「……」
また、バカって言った…。
わたしが膨れると、先生はニッと笑って、
「…減点1だから、ゴハン連れてくのやめた」
「……何ですか、ゴハンて」
「模試でいい成績取れたら、何かうまいもの食わせてやろうと思ったけど、…おあずけだな」
わたしは目を見開いた。
「…やだっ、おあずけ、いやっ!」
ジタバタしながら訴える。
「ダメ」
「やだやだっ、ぜったい、いい点数取るからっ」
わたしが必死で先生の腕を掴むと、先生はいじめっ子顔でにっこり笑って、
「考えとく」
わたしはがっくりと先生の肩に顔を埋めた。
先生はくすっと笑って、今度は優しく、私の身体を包み込んだ。
「椎名…」
「…はい…」
「不安にさせたのは、…悪かった」
「……」
「今度からは、…何かあったら、泣く前に電話すること。…いい?」
「……」
わたしは、先生にしっかりとすがりついた。
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