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ふと気付くと、先生が動きを止め、じっとわたしを見下ろしていた。
その目はとても苦しそうで、……わたしは戸惑いながら、ただその瞳を見つめ返した。
「…先生…?」
いきなり、ベシ、という衝撃をおでこに受け、わたしはびくっと身体を揺らした。
「いた…」
唐突におでこを叩かれ、訳が分からずにいると、先生が唐突にぎゅっとわたしを抱きしめた。
それがあまりに強い力で、その息苦しさに思わず顔をしかめる。
「…苦しい、先生…」
「……」
きつく拘束されているので、顔も上げられず、先生の顔を見ることも出来ない。
「先生……?どうしたの……?」
「……」
「先生……」
「…お前、…今、頷いた?」
「……」
「頷いたよな」
「…はい…」
「減点1」
「…はい…?」
「…そんな、…簡単に、男の誘いに乗ったら、ダメだろ」
「……」
先生が、腕を緩める。
何か言いたげにわたしの顔を見つめ、……愛おしそうに、そっと唇を重ねた。
そしてもう一度、力強く、わたしを抱き寄せる。
「春山先生……?」
そのまましばらく、先生はわたしを離さずにいた。
自分の中の何かをこらえるように、痛いほどきつく抱きしめながら、優しく頭を撫でる。
……先生……。
わたしはその腕に、夢見心地で身体を預けていた。
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