25章 咆哮

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「パワープレーは維持。前線の人数差でプレッシャーをかけていけ」 後半開始からアップしていた井上と西岡駿也(にしおかしゅんや)を木戸川が呼び寄せる。主審に交代を告げるたのち、最後の指示を伝えた。 ボールがラインを越えてプレーが中断したタイミングで主審が交代のボードを掲げる。 向坂を井上に。スタンを西岡へとメンバーを変えた。向坂より体力と身長のある井上で右サイドの攻撃力を上げ、上下スプリントのある西岡の投入でバイタルエリアのカバーリングを効率的に行えるようにする木戸川の意図が込められていた。 「頼むぜ」 全身汗だくの向坂が井上とタッチ。後輩にあとを託す。 「あとはお願いね」 その数分後にスタンと西岡が交代。入れ替えを済ませると、メンバーに監督の意向を伝えた。 なるほど、澱んだ両翼を活性化させるつもりか。 香城館の交代を見ていた高梨はこう推察し、不敵な笑みを浮かべる。それは彼らのあがく様子を楽しんでいるかのようだった。 遅いぞ木戸川、すでに翼は折れてる。 その証左がこれだ。そう言わんばかりに高梨がサイドで必死にボールを追う10番を見た。
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