プロローグ

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見ていた智之たちも、驚きの声をあげていた。 利央は立ちすくんだままだった。向島はそんな利央に一言いう。 「よかったです、動き。さすが南米のプレイヤーですね」 良い時間でしたと、澄ました顔で向島は言う。 くやしいが、認めるしかない。技能、経験、実力を思い知った利央は肩を落とす。 「三時間以上の練習をしても、ここまでパワーがあるのはすごいです。今度は部内の試合で見せてください、全力でする南米仕込みのプレーを」 向島の言葉に皮肉はこめられていない、むしろ再戦を楽しみにしている感じだ。 それよりも、彼にひとことだけ言いたいことがある。利央は向島の顔を見て言う。 「大都、だっけ。俺は大都に言いたいことがある」 「なんでしょう」 振り向いた向島のまっすぐな視線に負けず、利央は言い放った。 「俺はリオって名前だけど、南米人じゃない。俺は沖縄出身の日本人だ」 利央の告白に、向島は稲妻に打たれたように立ちすくんだ。そんなに驚くほどのことか、と利央は思う。 「うそだ」 「本当だ」 驚く向島に見かねた藤崎冬馬(ふじさき とうま)が横やりを入れる。
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