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試合時間は残り半分が過ぎていた。いまだに利央たちは一点も取り返せず、修英の激しい攻撃にさらされている。
パワープレーで冬馬へ繋げるも越智の激しいプレスに阻まれ、まともにボールを動かせなかった。
ちくしょう。
強引なコンタクトプレーを受け、転倒した冬馬が起き上がりざまに越智をにらむ。
鋼鉄の肉体といっても過言ではない身体が繰り出すディフェンス。さすがのオオカミも筋骨隆々の雄牛を仕留めるのは厳しい。
何度かチャンスはあったが、何度か彼にバランスを崩されて転び、しまいには小競り合いの最中にスパイクで足を踏まれた。
利き足のつま先に岩を落とされたような痛みを感じたが、歯を食いしばって動き続けていると痛みが引いた。試合に集中してアドレナリンが噴き出しているおかげである。
あとで痛みがヤバいかも、と自陣に戻りながら足の状態を確認する冬馬はそう思ったが、すぐに振り払った。
俺はFWだ。今は同点に追いつくこと、それだけを考えろ。
自身に力強く言い聞かせる。そして修英のパスを必死でインターセプトした伏見の姿を見届けるや、すぐにバイタルエリアへ駆け出す。
そこには越智がすぐにマークをつけ、張り付くようについてきた。
なんとか、同点に。
足の違和感と焦りを抱えながら、勝機を探るのであった。
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