779人が本棚に入れています
本棚に追加
立ち上がりの勢いはすでに無く、修英のペースで試合が進んでいる。一方、相手の実力を目の当たりにした選手以外の面々も衝撃を受けていた。
どよめく香城館側と歓声をあげ追加点を望む修英側。ベンチと応援団も空気が二分している。
「厳しい状況ですね……」
試合も見守る木戸川ら指導陣の横にいた顧問の斎藤がつぶやく。ロングパスで冬馬や利央に繋いでも、修英は落ち着いた守備でセカンドボールを狙い、奪うと速いパス回しで攻撃を組み立てる。その攻守の切り替えの早さに香城館の選手たちは置き去りにされ、空いたスペースを埋められずに突破を許した。
結局このピンチは、なんとか智之が沢口へのキラーパスをカットし、藤山がクリアしたことで事なき得た。
「パスとランニングが速すぎる、レミジオや埠蘭の比じゃない……」
修英の機動力に舌を巻いた斎藤。まるでユース並だと感じた。
「同じ高校生なのに、ここまで差が出るのは一体何が……」
「パス精度とスプリントだよ、向こうは集中して鍛えてるんだ。斎藤ちゃん」
修英と自分たちの差の正体を若井が教えてやった。
「スプリントとは何ですか」
「ああ、それはな」
サッカー未経験者の斎藤に、若井が教える前に木戸川が口を開く。
「昔から高梨の持ち味だったものだ」
若井を差し置き、木戸川が解説した。
最初のコメントを投稿しよう!