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「修正とは」
おうむ返しに尋ねる。
「最初の反応は初戦の感覚でやってたと思う。ウチが予想以上にスピードと精度があったから、ヤツが調整したんだ」
若井が修英の選手を指をさす。その先には背番号7番、三年生のアンカーボランチ、西野昌平がいた。
「立ち上がり、7番は寄せに行かずに10番(桧山)がプレスかけていた。初戦ならあれで相手がビビッてバックパスだったんだろうが、相手は向島と榊だ。サイドから前に仕掛けるパスワークに驚いたに違いない」
だから修正をかけた、と若井がいった。
「その後、左サイドからピッチ全体を見渡してウチの動きを観察し、プレスをかけるタイミングとパスを出す感覚を修正した。そして前線のメンバーに動きを変えるよう指示を出したんだろう」
「だからあのゴールキック後に動きが素早くなった。直前に11番(沢口)や10番たちと会話してたしな」
ベンチの位置から西野を見ていた若井。高校生のとき自分がアンカーボランチだったこともあって、動きをしっかりとらえていた。
「なるほど。彼が司令塔の役割なんですね」
斎藤がうなずく。
「微調整を可能にしたのはスプリントの多さと、選手個人のトラップ技術だろう。修英は手を抜くなんて舐めたプレーは一切しないからな」
木戸川がいう。そして一言。
「前半で追加点をあげられたら、この試合、かなり厳しくなる」
監督の言葉にコーチたちが一斉に木戸川を見る。プラス思考で選手に全幅の信頼を寄せている彼が、そこまで思い詰めるほどに修英は強い相手なのだ。
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