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木戸川の抱いた不安が現実のものとなったのは前半30分のことである。
激しいプレスで左サイドを攻めあぐね、ボールをサイドライン外に出してしまった。あっさり主導権を修英に渡す。
｢ナル｣
柳井がサイドよりにいる勅使河原にスローイン。香城館ゴールを背に胸トラップで足元に収めようとする彼に三方向からプレスが迫った。
背後の藤山に側面から伏見、そして眼前にはバックパスを切る利央。素早く囲う。
これで奪えばカウンターを仕掛けられる。
そう考えていた伏見は強めに勅使河原に接触。姿勢を崩して足元のボールを狙う。一方、背後の藤山は接触はせずにターンからの突破を防ぐためにプレッシャーをかけた。
だが、修英の王子は動じない。伏見の強力なフィジカルコンタクトを受けても身体の軸がぶれず、ボールを細かくタッチして保持し続けるのだった。
なんて体幹の持ち主だ。
ファッションモデルのような痩身の外見とは裏腹に、ぶれない身体を持つ勅使河原に伏見は驚く。
だが、関心はしている余裕はない。フィジカルに分がある伏見は粘る。
キャプテンの助けにいかなきゃ。
苦戦している伏見を見た利央はスタンと共に勅使河原を囲もうと駆け寄る。その瞬間、背後を柳井が通ったことに気づかなかった。
競り合いながら勅使河原はその動きを視認し、理解する。
｢ほらよ｣
勅使河原が斜め前にパスを出す。ボールは一直線に駆け寄るスタンと利央の間をすり抜け、ふたりの後ろをとっていた柳井につながった。
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