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クロスは智之たちの頭上をこえ、ゴール前に駆け寄った沢口のもとに届けられた。このチャンスを修英の11番はしっかりものにする。
矢田の背後から跳び、頭で合わせたシュートが二点目を決定づけた。
「マジかよ……」
追加点を得て歓声がやまないなか、仁は背後にあるボールを見つめてつぶやく。勅使河原につられて視線をサイドに向けたせいで、矢田の背後にいた沢口がクロスのタイミングに合わせて動いたことに気付かなかったのだ。
二度のオトリ役を見事に果たした勅使河原。そして見事な連携をみせた修英のオフェンスたち。圧倒的スピードとポゼッションによって試合は完全に掌握されている。
「次元が違いすぎる……」
ユニフォームの袖で汗をぬぐった利央はそう感じた。ディフェンスが間に合わずに失点を重ねる味方をただ見るだけしかできない状況が悔しくてたまらない。
そんな利央の横を勅使河原が通り過ぎざまに独り言を放つ。
「コイツら、弱」
重く打撃力のある言葉が利央の後頭部を殴りつける。それでも反論できないまま横目で修英の王子の背を見送るしかできなかった。
その後キックオフで再開するも、ズタズタに両サイドを切り裂かれたことで動揺したまま反撃できずに前半を終えてしまった。
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