777人が本棚に入れています
本棚に追加
/423ページ
どう声をかけるべきか。
前半戦を終え、ハーフタイムでベンチに戻ってきた選手たちを見た木戸川は思案する。歴戦の監督もこの最悪な空気を前にかける言葉に迷っていた。
猛暑の連戦でたまった疲労と相手の強さを見せつけられた選手たちは皆一様にうなだれて肩で息をしている。
無理もない。あれだけ自信のあったサイドアタックを封じられ、ディフェンスも素早いパス回しについていけず簡単にゴールを割られたのだ。
しかも、要注意すべきFW沢口大樹に二度も決められる始末。ディフェンスも崩壊寸前である。
そんな榊をふくめDF4名は自身の不甲斐なさに前に立つ木戸川の顔を直視することができないまま、視線を芝生に落としていた。
｢後半もパワープレーでいく。相手がパスを回している間にリトリートで中盤のプレッシングを強化しろ、前がかりになった瞬間に放り込め｣
言葉を選び終え、一度大きく息を吸った木戸川はボード片手に選手たちにいった。すぐに反応した選手たちが顔をあげる。
｢パスで崩せない相手だ、ここは縦ポンしかない。セカンドボールを狙われるリスクがあるかもしれんが、これは割り切れ｣
いまいち機能しないオフェンスたちに目を向ける。激しいプレスにビビッて攻撃の手を緩めぬよう指示した。
｢恐れず全力で勝ちにいけ｣
木戸川が強い口調で呼び掛けた。ビハインドのいまはとにかく得点をあげて追いつく。リスクがあろうと、この戦術を貫くようにと確認させた。
｢はい｣
最初より元気を取り戻した選手たちの返事を聞き、うなずいた。
最初のコメントを投稿しよう！