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驚いた利央は向島を見る。視線に反応した向島は、微笑んでいた。
俺のポジションをすぐに奪えられるから、余裕の笑みなのか、それとも……。
挑発、なのだろうか。よくみる格闘技の試合の始めに、対戦相手と握手する。サッカーでいうならば、試合前に互いの健闘を願う握手だ。
微笑んだ顔をしても、鋭い目はまっすぐ利央をとらえている向島。まるで、これか試合をするかのような表情。
ハッと、利央は気付く。これは、単なるポジション争いだけではない。試合なのだ。
たったひとつのポジション、MFのトップ下をめぐっての。
やってやる、俺のサッカーはU-15日本代表に負けはしないことを見せつけてやる。
利央の身体の奥底から、闘志がわいてきた。
「そうだな、俺も頑張らないとな」
覚悟を決めた利央は向島の手を握る。固い握手を交わしたあと、向島はメンバーに参加させてもらえたことの礼を述べて帰っていった。
「拒否するかなって、思っていた」
向島の背中を見送った冬馬が利央にいう。挑戦的な向島の態度に利央が怒るのでは、と危惧していのだ。
「そんなことしないよ、むしろ楽しみだし。でも、簡単に渡すわけにはいかない、俺のサッカーはそんなに弱くはないよ」
落ち着いた口調でいった利央は、さっそく練習を始めた。ふん、それでこそお前だ、と冬馬は心の中で思っていた。
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