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階段を降り、辺りをキョロキョロと見回してから、わたしは左に折れ、廊下の奥へと進んだ。
カウンセリング室のドアをノックすると、一瞬間があってから、どうぞ、という声。
「失礼します…」
ドアを開け、わたしは部屋に入るのをためらった。
「あら、椎名さん。…今日はどうしたの?」
いつものようにキャスタ-チェアに腰かけたフジコ先生の向かいのソファに、広い背中の後姿があった。
「あ、すみません、…また、後で来ます」
わたしが引っ込もうとすると、
「いや、…もう失礼するところだから、構わないよ」
そう言って立ち上がったのは、…あの、ササモリという刑事だった。
「それでは、よろしくお願いします、峰村先生」
「はい、何かありましたらご連絡差し上げます」
二人が互いに頭を下げた後、ササモリさんはこちらに向かって歩いて来た。
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