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指折り数えて待ちかねた、次の土曜日。
お昼御飯を済ませたわたしと祐希は、約束の時間の10分前には家の前に待機し、先生のお迎えを待っていた。
「…祐希、ほんとに約束してよ。先生の前で余計なこと言わないって」
「分かったってば。ねーちゃんしつこいよ」
祐希は顔をしかめつつ、それでもテンションはかなり高めだった。
大好きな今日子先生の家にお邪魔することへの喜びと、大人の夕食会に参加することへのワクワク感で、昨夜はなかなか眠れなかったらしい。
…遠足じゃないんだから…。
目を輝かせ、伸び上がって迎えの車を待つ祐希の顔を見ながら、まだまだ子供だな、と呆れつつ、微笑ましくも感じたりする。
そういうわたしも、…休みの日だというのに、今朝は6時に起きて、そわそわしっぱなしだったんだけど…。
「ねーちゃん」
「なに?」
「今日は、絶対にキスさせないからね」
「……」
わたしはため息をついて、
「心配しなくても、そんなことしないよ」
…祐希がいたらどうせそんなチャンス、ないだろうし…。
「なにぶすくれてんの」
「…別に」
「そんなにキスしたいの」
「うるさいな、もういいって」
「春山ってキスうまいの?ベロ長い奴とすると、きもちいいってほんと?」
「……」
…祐希を叱ってもきりがないので、まずは諸悪の根源である武藤の処理をどうするか、考えよう。
「あ、あれかな」
祐希の視線を追うと、見慣れた黒のセダンが車列に混じり、向かって来るのが見えた。
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