振り向くな

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父は銀色のボールに入った中身を川に流すと、もう一度私に「何があっても振り向くな」と言いました。 帰り道、先を歩く御姉ちゃんと御兄ちゃんはお喋りはしていても前を向いて会話をしています。 「お父さん、二人は何故顔を見て会話してないの?」 後ろを歩く父に振り向くなと言われていたので、立ち止まり話し掛けました。 「絶対振り向くなよ。二人も振り向かないように歩いてるんだ」 父はそれだけ言うと頭を掴み、横を向こうとした私の顔を前に向かせます。 川の橋を渡り終えた時でしょうか、後ろから何かを食べる音が聞こえます。 「お父さん、何か食べてる?」 「いや、何も食べてないが。どうした?」 「…何でもない」 私は怖くなり、早く橋を渡り終えたくて前を向いて歩く事だけに集中しました。 御姉ちゃんに、階段を上り終えたら振り向いても良いと言われたので、さっさと上ろうとしていると、後ろから私の名前を呼ぶ父の声が聞こえました。 「お父さん、なに?」 振り向こうと首を横に向けようとする私を父は…。 「振り向くな麻琴」
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